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宇宙羊羹を食べた。

 

「あなたは宇宙食を食べたことがありますか」と人に聞けば、「なんで地球にいるのに宇宙食食わなあかんねん、阿呆か」といった反応で返されるのが一般的でしょう。そもそも地球の食材が全体的にコスト高となり、庶民の生活はいたって苦しいのに関わらず、宇宙食に手を出す行動原理そのものが奇怪と思われるのが関の山です。世知辛い世の中。しかし私はとうに行動倫理感が狂っているので怖いものなどありません。


ということで「宇宙羊羹」を食べてみました。





その前に、この「宇宙羊羹」をどこで入手したかなど、その辺りの背景を説明いたします。現実で仕事ができない人なんだと思われたくないのです。入手場所はですね、


福島県に飯野という土地がございまして、そこにある「立子山」と呼ばれる山の麓に「UFOふれあい館」という施設があります。この施設の説明は割愛しますが、宇宙人×UFOな感じでして、福島県民は休みになると子供を連れてここに遊びに行きます。子供はここで宇宙的な洗礼を受け、福島県民特有の、「人当たりはいいけれど何を考えているかいまいちよくわからない」人格形成に一役買っているというわけですね。


UFOふれあい館で遊んだあと、そのすぐ向かいにある「UFO物産館」に向かうのが正規ルートです。ここで宇宙感のあるお土産を買ったり、さして宇宙感もないラーメンを食べたりして帰る。これが福島県民にとっての完璧な休日のかたち。ちなみにここのラーメンは「飛魚」で出汁をとった魚介系。普通に美味しい。

この食堂の脇にこじんまりとした売店があり、宇宙的な食料を入手できます。宇宙チョコ、宇宙たこ焼き、宇宙飴など。よりどりみどりですが、少々割高。なんせ宇宙に適応させたチョコや飴なのですから仕方ありません。まだ一般人にとって宇宙は高くつく。


そういうわけで、チョコやたこ焼きや飴などありましたが、私は直感で「宇宙羊羹」を選びました。渋いチョイスだと自分でも感じましたが、実はこのとき財布に1433円しかなく、宇宙食のラインナップでは割安な羊羹を選ばざるを得なかったのです。逆にいうと、羊羹は比較的宇宙適応のコストが安上がりということなのでしょう。勉強になりますよね。


前置きが長くなってしまいました。テンポよくいきましょう。上から外側、中身、本体です。宇宙線を反射するため銀色のパッケージに包まれています。製造メーカーはパン祭りでお馴染みのヤマザキ。ヤマザキと羊羹がいまいち結びつきません。宇宙産業との癒着構造的なイメージが湧きますが、深く考えないでおきましょう。皿に乗せた感じはただの羊羹。考えれば当たり前ですよね。宇宙羊羹だからといって、宇宙味の特殊な羊羹になるなんてことを宇宙飛行士は望んでいません。ごくごく尋常な羊羹が提供されることこそ、現場のニーズというもの。

切断してみました。ひたすら普通の羊羹です。普通以上に普通の羊羹という感じです。ちなみに羊羹とは、そもそもが羊の羹。すなわち熱々の羊のスープという意味なのですが、歴史的な紆余曲折を経て、小豆を煮て固めたものを「羊羹」と称しているのは、本質を失っており、狂っていると思われます。

食べかけ画像で失礼。「栗羊羹」だったのですね。中にちゃんと栗のカケラが入っている。大事なことを忘れていました。味ですが、羊羹でした。甘さ控えめの上品なお味。ひんやりとした薄暗い仏間で、少し古い煎茶と一緒に嗜むと趣がありよろしいかなと思います。


ただ、実際は宇宙で人間の味覚は鈍麻するそうです。となると、この上品な甘さでは宇宙飛行士の方にとってちょっと物足りないんじゃないかという疑問も湧きます。かといって、宇宙から帰ってきたら、宇宙飛行士全員2型糖尿病になっていたなんてのはもう人類の恥なわけで、これでいいのだ、なんてバカボンのパパみたいなことを言って終わりにしたいと思います。



寄稿:ほし氏

口から出まかせ日記【表】

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