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最終的に人は故郷のことしか言わなくなる。

 

画像は海洋博公園のちゅら海水族館の画像である。内容とは関係あるようで、それほど関係ない。

 

「郷土愛」ということについて考えてみることにした。当方は沖縄生まれの沖縄在住ではあるが、いっとき転勤で岡山に住んでたり、東京で働いていたこともあるので、沖縄以外の土地のこともある程度は知っている。

 

沖縄というのはやはり、それなりに「えぐみ」というか「くさみ」のようなものが強い土地ではないかと思うんである。

 

東京で電車に乗ってる時に、綺麗なおねーさんたちがきちんとした丁寧語で話してるのを聞いた時に、なんかすごいなーという感懐を抱いたものである。沖縄の女性というのは、それなりに訛りというのが誰でもある感じであり、「はっさ、だからよー」「でーじ」とか普通に使ってる感じである。

 

一般的によく言われてることであるが、歳をとってくるとふるさとというものの良さというのが分かってくるという。故郷を離れて東京などで働いてみたりなどすると、他の土地の人たちと自分の故郷についてのあるあるネタなどを話し合うのも、なかなかに興味深い体験になるだろう。

 

高校生ぐらいの時に、藤沢周平の「ふるさとへ廻る六部は」というエッセイ本を読んでみたのであるが、この本はひたすら繰り言のように故郷の事ばかりを書いてる本である。

 

失礼ではあるが、その時は「ジジイの繰り言」のように感じた。全体的に書かれてる内容というのが繰り返しが多い感じであり、僕自身が文章から質感を読み取る感性というのがちゃんと磨かれてなかった。今、読み返してみるとまた違う感じ方をするのかもしれない。

 

こういう「郷土愛」的なものというのは、故郷を離れてみることでますます強くなっていくものなのかなと思う。地元で生まれて、地元でずっと暮らすような生活をしてる人にとっては、生活の身の回りにあるものはいつもある極めて普通のものだ。土地を離れて長く暮らしてみないと、地元の本当の良さというのは分からないのかもしれない。

 

だからこそ、人々はたまに住んでる場所を離れて旅をしてみるものなのかもしれないな。普段とは違う場所に寝泊まりして、違う風景を見ることで、自分の故郷の本当の姿というのが分かる。

 

僕自身の郷土愛というのはどのようなものだろうか? ひとまず、沖縄県民はみんな海が好きである。誰でも一箇所ぐらいは自分が好きな海を眺めるスポットというのがある。岡山に住んでた時に、瀬戸内海の海をみたことがあったが、沖縄の海に比べると透明度が全然足りないなと感じた。

 

僕が沖縄の特徴として感じるものはやはり海のことなのだろうなと思う。地元にある、いつもの景色というのが脳裏に刻まれて、それが記憶や人格を作り上げて、その人の人生を織り上げていく。

 

歳をとり、思考の柔軟性が失われると、僕もいつしか「ジジイの繰り言」のように故郷のことばかりを言い続ける人間になるのだろう。しかしまぁ、全てのものがデジタルになり瞬時に共有される情報社会では、人間らしさというのはそういう土地の匂いだけになるのかもしれない。

 

人がその人生を語るときに、自分の故郷の話だけになるのは、ある意味ではすごくリアルなことなのだろう。

 

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