就職してしばらく途絶えた自転車旅行を再開してそろそろ20年になる。夢だった国外はもはや無理そうだが、国内に関しては、2018年の鳥取行きで全都道府県を制覇したものの、地図を眺めると、行ったことのない場所の方が多いという当たり前の事実を再確認することになる。
そんなに自転車旅行が好きなのかと自問すると、いささか不安になる。
出かける朝はいつも憂鬱だ。暑かったり寒かったり雨が降っていたり。これから17時近くまで8時間も走らなければいけないのかとうんざりし、なかなか腰が上がらない。旅の2日目を過ぎれば筋肉痛も加わる。まだ出発しなくてもいいいいわけを考えながらうだうだと過ごすが、やがて間に合わない時間が近づき渋々と出発する。
走り出しても、あと何キロあと何時間とそればかり考える。しばらくすると、お昼ご飯のこと。お昼を食べると、お風呂のこと夜の居酒屋のこと。
走っていると自転車の調子が悪くなることも多い。変速がうまく決まらなくなったり、異音が続いたり。それをごまかしごまかし走り続ける。
退屈で苦行じみてはいるが、ペダルを回し続ければ-きつい坂では押すことも多いが-、いつか目的地にたどり着くことができる。高い場所でも遠い場所でも、自転車は連れて行ってくれる。貧弱な足でスピードは出せず、平均速度はだいたい17km未満。そのおかげで、車では気付かないようなことにも気付かせてくれる。その達成感と小さな楽しみが、私を自転車旅行に駆り立てているのだろう。
寄稿:エスペラ