高齢者施設でのレクリエーション。
カレンダーには日ごとのレクリエーションテーマが記載されており、この日は【折り紙】とあった。
レクリエーション担当が内容の指揮を取り約30分間利用者をけん引する。
環境条件は下記。
介護老人保健施設であり、利用者の平均介護度は3。平均年齢は約80歳といったところ。数名60代もいらっしゃる。90代も数名。男女比は3:7といったところか。
レクリエーションへの参加は強制ではないが、自然と男性陣の参加は消極的であり、参加することが恥ずかしそうでもある。そう見えるだけの偏見かもしれないが。女性陣は半数以上が協力的であり自発性が高い。これもその時のお題次第かもしれない。
以前、【折り紙】を行った際は何か花を折る内容で行い、折り方を大型モニターで流しながら手順をサポートしながら実施した。目的、お題としては良かったのだがやはり日常で折り紙を折っていない人に新たなお題を折って貰い、時間制限がある中で約40人程度を参加させるのは難しい。
そこで、今回はとにかく手を動かし、脳を使って頂こうとお題は【鶴】を折ることにした。折ったことがある人は高齢者の中にはたくさんいるであろう私の勝手な判断で実行した。誰かが折れれば、折れない人をサポートしてくれる。サポートすることでコミュニケーションが生まれ二次、三次活用が生まれると考えたからだ。
しかし、指揮を取る私は【鶴】を折り紙で折れない。
スタート同時に折り始める人もいれば、全く触れもしない人もいた。それはそれで良い。自発性を問う場なだけであり強制をする場ではない。やはりあがった声の多くは
「折り方を思い出せない…」
だった。
これは狙い通りであり、そこに対し私が側に行き、とにかく
『思い出してください。隣の人に教わってください。出来る人は折れない人に教えてあげてください。』
とふれて回った。
数分後、1番最初に【鶴】を1羽折り終えたのは男性利用者のひとりだった。
意外だった。
その人はいつもは微動だにせず、身体を痛そうにしていたからだ。
やはり潜在は無限だ。
今回の狙いは【鶴】を折り、1羽で終わらずに時間いっぱい使って【鶴】を繰り返し折る事、手先を動かすこと。脳を使うこと。結果、その男性利用者は計4羽の【鶴】を折った。なんだかとても素晴らしかった。2番目に追いかけるように女性の利用者が同じように2羽、3羽、4羽と淡々と折り終えた。その他の方々は多くて2羽を折った。
終わってみれば半数以上の利用者は【鶴】を折れず。途中までは折れるがその後の折り方が思い出せずにレクリエーション時間は終了。
なかには【鶴】ではなくヤッコさんを完成させた人もいた。
しかし、私はそれでよいと思った。
頭の中に出てきた何かを手を使って表現することに意味があったのだから成功だ。
寄稿者:TaNuma
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