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風呂キャン界隈の生態

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少し前「風呂キャンセル界隈」というキーワードが話題になった。風呂に入るのが無理すぎてキャンセルしてしまう人たちのことを言うらしい。長いので「風呂キャン界隈」とも表現されている。

彼らが「キャンセル」に至る原因は様々であり、「苦手・嫌い」といった嗜好に限るものではない。風呂に入れなくなることは、うつをはじめとした精神疾患によるセルフネグレクトの典型的な兆候であるとも言われ、意外と身近にもいたりする。適切なケアとつながってほしい。

ところで私は別の「風呂キャン界隈」に片足を突っ込んでいる。ご存知だろうか。「キャンセル」ではない。「キャンペーン」の方の「風呂キャン」だ(そんな言葉はない)。

私はときどき、非日常なサ活(サウナ活動)・風呂活を求めて、風呂キャンを敢行する。風呂キャンの一日は風呂に始まり風呂に終わる。朝風呂はしごは当たり前。日中さらに何軒か周り、帰ってきてからさらに風呂に入る。限られた時間でより多くの風呂に入るため、早起き・遅寝が基本となる。私は多いとき、おおむね1日3~5軒回るが、よりガチな方々は1日に10軒以上回る。ここまでくると、キャンセル側の人間でなくても奇異に映ると思う。同僚が言った。「そこまでして風呂に入ってどうするのか」。私にも分からない。

風呂キャンには計画が重要だ。宿泊先のホテルに大浴場は付いているか、朝風呂はできるか、近隣にサウナや銭湯はあるか、営業日や営業時間はどうか、どう回るのが効率がいいか…。出発機会を得る前の普段から、エリアごとにぼんやりとしたモデルコースがいくつか頭の中にあり、いざ出発が決まれば、その中からピックアップしたルートをさらに微調整して風呂キャンに臨む。コンディションづくりも重要だ。入浴というのは体力を消耗する行為だ。さらに食事。空腹はいけないが、満腹はもっといけない。移動時間と営業時間を考慮して、最適な補給ポイントとタイミングを見つけることがカギとなる。「そこまでして風呂に入ってどうするのか」。私にも分からない。

大阪在住の私だが、先日仕事で東京に出ていた。一泊二日の行程である。出張は絶好の風呂キャンチャンスだ。普段の生活拠点とは異なる地域の風呂を楽しめるから、「非日常」感が強まる。特に東京は、まだ町なかに多くの銭湯が残っているし、サウナもたくさんある。選ぶのに困らないし、当分巡り終わることはないだろうという感覚があっていい。

初日の業務が終わり、メンバーとかんたんな夕食会の場を持った。リラックスした時間を過ごし、同じホテルに戻ってそれぞれの部屋でひと晩休む。

私はチェックイン後にひとり、いそいそとホテルを抜け出す。近くの銭湯に向かうのだ。ニヤつきながら出ていく私を、メンバーの一人が目撃していたらしい。翌朝、他のメンバーと共に追求された。どうせいかがわしい店にでも向かったのだろう、と。世が世なのでセクハラである。その期待に応えるように「"お風呂屋さん"に行ってた」と答える。「物足りなかったから、2軒はしごしたよ」と。彼女たちも私が風呂好きなことを分かって尋ねている。「お元気ですね、じゃないんだよ」。

最終日の業務が終わると、荷物をまとめ新幹線の駅へ向かう。そのまま仲良く関西まで並びのシートで帰ってもいいのだが、「君らもおみやげ買ったりするだろう」と、改札解散としている。これは前任者が始めた手法だが、今更ながらよくできたシステムだと感心している。彼女たちがエキュートに消えたことを確認すると、私は新幹線ではなく、在来線のホームに向かう。キャンペーンのエントリーはこっちだ。

"お元気"な私は、そのあと8軒巡った。
「そこまでして風呂に入ってどうするのか」。私にも分からない。

書いた人

id:pochin_pudding(ぽちん):
風呂キャンあるある早く言いたい。

note: pochin_pudding

X: pochin_pudding