写真と文

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ダメになる宿③ 〜鎌先温泉 最上屋旅館〜

 

『写真と文』の変わり目が来ている気がしますが、季節もちょうど変わり目。空がすっかり秋っぽくなりました。あとどういうわけか、最近私が外を歩いているといきなりスズメバチに襲われるため、とっさの回避が欠かせません。回避といえば旅行もそう。いかにインバウンド的な混雑を回避しつつ、快適に楽しめるか。ここがカギでしょう。

hiyokomagazine.hatenablog.com

↑前回の記事。


それはいいとして、また旅行にいきました。念頭にあったのは日常からの回避。会社と自宅との往復、唐突に来る多種多様な勧誘、米不足、政治不信、そこらで伸び放題の雑草などがじわじわと心を蝕み、そこに追い打ちをかけるようにスマホの画面が割れました。もう限界だ。汚染した精神を直接ゴシゴシ洗いてぇ。となれば、人は温泉に浸かるほかないのです。ということで、心のよく洗えそうな温泉宿を訪ねました。

 

行ったのが連休でしたので、今回はちょっと贅沢に、距離の離れた温泉旅館を一泊ずつ予約してみました。ということで「ダメになる宿」シリーズは二連続で更新予定でございます。

 



 

今回やってきたのが、宮城県に蔵王っていうでかい山があるんですが、その麓に佇む「鎌先温泉」です。そして、お世話になったのがこちらの最上屋旅館という、創業何百年かは忘れましたが相当古いと噂の旅館。玄関先の佇まいからして心にクリティカルヒットしてます。それじゃあ中へ入りましょか。

 

 

どーん。入ってすぐの階段から迸るこの風情です。今までなにに負けていたのか知りませんが、私は勝ったと感じました。それよりなにより、女将さんやスタッフさんの丁寧な対応に感激。なんて良い方々なのだろう。初っ端から幸福感に包まれつつ、そのまんま部屋まで案内いただきました。

 

 

しかし、館内がどこまで行っても趣深い。伝統的な湯治場の雰囲気を感じられつつ、ところどころでリノベーションもしっかりなされ、古さと新しさが継ぎ接ぎされたような造りとなっています。それがまた良い。

 

 

こんな「自炊室」もある。鎌先温泉に現存する旅館の中で、最上屋旅館は今も長期の湯治客を受け入れている唯一の施設なんだそうです。皆さんならここでなにを作りますか。焼きそばとかですか。

 

 

さっき玄関で見た階段を今度は上から拝見してみましょう。いやぁこれはエロいな。

 

 

どーん。部屋に着きました。年季が入っているものの、不潔感のない清々しい和室です。すでに敷かれている布団。奥にある謎の接待スペースもちゃんとある。これはもう完全勝利でしょう。本当にありがとうございました。誰に言ってんだ。

 

 

荷物を下ろし、とりあえず茶をしばきつつ、これからやることを頭に巡らせてみました。といっても、やることはだいたいもう決まっている。

 

 

 

はい。てことで、まずは風呂です。最上屋旅館に三つある浴室のうちのひとつ、「三宝の湯」という大浴場。これが非常に雰囲気のある風呂でして、人によってはちょっと怖いと感じるくらいかもしれません。ただ、お湯の質が本当に素晴らしくてですね、また浴室内には香ばしい木の香りが充満し、濃厚な入浴体験ができます。浸かっているとある種の陶酔感まで感じられてくる。


 

お湯は熱すぎずヌルすぎずのちょうど良い湯加減。よく見ると、角にある湯口の外に小さな社殿が祀られているんです。社殿の足元から湧いた湯が浴槽に注ぎ込んでいる。そんなイメージを喚起させる神妙な配置となっていて、お湯に浸かりながらありがたい感情が湧いてきます。心が洗われました🙏

 

 

心がピッカピカになったらすぐに夕食です。ぶっちゃけ、ここじゃ風呂と食事しか楽しみがないんですわ笑。むしろ、余計なものを取っ払ったシンプルなルーチンを堪能するのが肝でしょう。そういう意味で、食事も湯治場らしいシンプルさ。至ってお手本のようなお膳が出されました。冷酒も一本つけてもらいました。

 

 

これは私の中にある旅館の食事あるあるなのですが、だいたいお膳の中で一番美味いのが、こういう小皿に入った地味なやつだったりするんですよね。しかしこの山菜の和物がやたら美味しかった。これだけで酒が進む。

 

 

食後、館内をプラプラしていると、これはこれは旅館名物、自販機でビールを売ってました。てことで、部屋でちびちびやりながら、うーん、『写真と文』はいつまでもつかなぁ。今年いっぱいくらいじゃねえかなぁなんて考えながらまったりしました笑。

 

 

ちなみに鎌先温泉の名の由来ですが、昔、このあたりに住んでいた農民が岩を鎌で叩いてみたところ、その岩から温泉が湧き出たという伝説が元になっているようです。その農民はそのあとどうなったのか。きっとウハウハになって羽目を外して身を持ち崩して最後は無惨に路傍で死んだとかそんなとこでしょうが(失礼)、ちょっと変な岩とかがあったら試しに叩いてみようマインドは大切かもしれません。明日からみなさん学校や職場に鎌を持参しましょう🔪

 

 

もっとお伝えしたいこともあるのですが、あとは実際に泊まって確かめてもらった方がよろしいでしょう。ということで最上屋旅館、とてもいいところでした。ただ、「開放的な露天風呂」とか「豪華なお食事」だとか、そういうのを求めるならば他を当たった方がいい。あくまでも昔ながらの旅館です。しみじみと旅情に浸りつつ、黙って出されたものを食べ、黙然と風呂に浸かる。注文の多い人にここは向いてません。引き算を楽しめるならオススメできると思います。



mogamiya.net


宿泊料金は平日で一人一泊夕朝食付き13,750円〜ですが、休日ともなるとグンと料金もあがり、私の場合は18,000円くらいでした。それでも予約がなかなか取れない人気の旅館です。どうしても泊まりたい時は躊躇してはいけない。迷う理由が値段なら泊まれ。

 

 

寄稿:ほし氏

口から出まかせ日記【表】

https://twitter.com/hoshiboshi75