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ダメになる宿④ 〜小野川温泉 扇屋旅館〜

 

回は鎌先温泉にある最上屋旅館に泊まったことを書きました。昔ながらの湯治場らしい雰囲気の残るいい旅館でしたね。

 

hiyokomagazine.hatenablog.com

 

 

翌日。その最上屋旅館から西へしばらくいったところ。山形県米沢市の端っこの方にある、「小野川温泉」へと向かいました。こじんまりとした温泉郷ですが、魅力的な旅館がたくさんあるところです。かつて、小野小町がこの温泉に浸かり傷を癒したという「伝説」が残り、伊達政宗も度々ここまで温泉に浸かりにいたという「記録」が残っているそうです。小野小町は伝説で、伊達政宗なら記録になるところに時代の移り変わり感じる。

 

 

 

その温泉街の一角に佇む旅館、「扇屋旅館」に泊まったことを今回は書きます。外観からして風情が迸っているではないですか。噂によると、チェックイン前から建物の前で20枚以上写真を撮った不審者がいたんだそうです。あ、個人的な萌えポイントとしては、この建物の脇にちっちゃいお堂がちょこっとついておりまして、

 

これがまた良い。最上屋旅館もでしたが、信仰的なシンボルと一体になっている部分が感じられると、深く根ざした部分に足を踏み入れる感じがして、かなりワクワクしてくる。温泉に浸かることは、その土地が育んだ歴史に浸かることでもありますね。

 

 

早速フロントでチェックインを済ませ、女将さんに館内を案内していただきました。どこもかしこも雰囲気が良く、いちいち立ち止まって写真を撮りたくなってしまいます。

 

外から見た以上に中は広々としており、明るい雰囲気なのも意外でした。最上屋旅館もでしたが、こちらも古い部分と、新しくリノベされた部分がうまく調和しています。

 

そうそう。この旅館では黒電話が現役です。ルームサービスもこの電話でお願いするんですよ。

 

 

どーん。部屋に到着。数ヶ月前にリノベーションが済んだばかりの、こざっぱりとした8畳間。真新しい畳の匂いが心地よい。そして、この部屋の最大の特徴がですね、

 

 

どどーん。勝った。湯温80℃の源泉がいつでも湧く露天風呂付きのベランダがあるのです。これぞ人の夢さ。いてもたってもいられずに生まれたばかりの姿となった私は、

 

全裸のままガンガンに水を投入しました。そのまんまじゃとても入れたもんじゃありませんよ。ちゃんと調整してから入りましょう。

 

 

ぬふ〜。大勝利✌️

 

 

館内にはちゃんと大浴場もあります。こちらは加水をせずに温度調節してあり、源泉をそのまま堪能できるとのこと。お湯は透明感が強く、柔らかい感触。お湯の中でふわふわと湯の花が微かに舞う様子を眺めながら浸かっていると、幸せな気分になる。

 

 

そうそう。大浴場の入り口のガラスに素敵な意匠が彫ってありました。今から千二百年以上前、旅の途中で小野小町はきっとこうしてお湯に浸かったのでしょう。ところで彼女、逆ナンがすげえ上手かったって噂もあるんですがホントかぁ?

 

 

旅館を流れる時間はゆったりとしているようで、色々なことにうつつを抜かしているとあっという間に過ぎていく。ということで、黒電話で呼ばれて食事会場へ。ちゃんと個室が用意されてます。パッと見てすでに美味そうなものばかり並んでいる。

 

はいまずこの唸りを上げているA5ランク米沢牛のすき焼きに目が点となる。すき焼きとしても本式です。女将さんがここに割下を直接注いで、「焼いて」仕上げてくださいました。これはもう想像通りの味。何もいうことはありません😇

 

 

これが「鯉のあらい」です。米沢というと牛肉が有名ですが、鯉の産地でもあります。酢味噌をつけていただきます。チリチリとした食感で、食べた印象としてはカサゴの刺身とかなり似てます。小骨の骨切りもちゃんとしてあり、癖がなくて美味しいですね。

 

 

これが一番びっくりしたんですが、鯉のうま煮がドンと置かれていました。鯉の輪切りを醤油や味醂で煮て作る伝統料理で、この辺りの地域ではお祝い事には欠かせない一品。そんなものを私ひとりでいただくのはちょっと身に余る気がしました。見た目で躊躇しそうになるかもしれませんが、例えると、鯖の味噌煮を食感的にハードにしたような、単純にご飯がすすむ旨さであります。

 

 

山形名物「芋煮」もありました。赤味噌ベースで、酸味のあるあっさりした味わいながらコクが深い。信じられないかもですが、ほとんどボルシチに近い洋風な感じです。きっと赤ワインと合う。この芋煮を平らげた時点で腹が限界点到達。旅館の食事って残した記憶がないんですけど、泣く泣く残してしまいました。とにかくここの食事は味も量も質も素晴らしかったです。ごちそうさまでした。

 

 

 

膨れた腹をいたわるため、食後は岩盤浴に入りゴロンゴロンしてました。そう、岩盤浴までできちゃうんです。この扇屋旅館、見た目に騙されてはいけません。中身はリラクゼーションスパっぽさがある快楽空間です。ここに2泊3日ぐらいしてみてください。きっと帰れなくなるでしょう。なので私は1泊でとどめ、身を無理やり引き剥がすようにして翌日ここを離れました。が、この記事を書いている私の魂の一部は、いまだこの扇屋旅館をうろうろしているのです……👻
 

 

ということで、小野川温泉の扇屋旅館でした。風情だけじゃない、サービスの質も行き届いた素晴らしい旅館。また何度でも泊まりたいですね。小野川温泉自体に魅力的な旅館が多いので、そのうちまた紹介できればいいなと思います。うーん、今年はあと1回か2回はどこかに泊まりたいなぁ。

 

ogiya-ryokan.com

扇屋旅館はなんと創業500年。客室すべてに露天風呂が付いているというリッチさでありながら、ひとり当たりの値段は最高級プランでも2万円程度ですし、食事内容などを加味すると、なかなかにリーズナブルじゃないかと個人的には感じます。ちなみに私の今回のプランですが、【露天風呂付客室和室8畳一間トイレ無し(禁煙)夕朝食付き1泊2日】で14,000円でした♨️

 

 

寄稿:ほし氏

口から出まかせ日記【表】

https://twitter.com/hoshiboshi75