令和6年のGWは関西方面にでも行こうかと、ビジネスホテルの予約を取ろうとしたら、素泊まり1泊¥17,600とかいう天文学的数値が飛び出し、「アホか〜!!」と、思わず楽天トラベルの予約カレンダーを見ながら叫んでしまいました。宿泊体験と価格が釣り合わな過ぎ。同じ費用でもっとリッチな体験ができるなら近場で充分ですわ。なーにがインバウンドだふざけやがって。ぷー、ぷっ、ぶっぷぅ。怒りの放屁ののちリサーチをし直し、結果、とある温泉旅館に泊まることに決めました。
ということで、今回は福島県と宮城県の県境付近にある温泉地、小原温泉にある「旅館しんゆ」を訪れました。実は以前からよくこの旅館の前を通り過ぎており、「なんだか風情のある旅館があるな」と気づいていたのですが、泊まる機会を作れませんでした。そんなわけで今回が初めての宿泊。
趣のある引き戸を開けて中に入ると、宿のご主人が現れ丁寧に応対いただきました。流石にGWだから混んでるかと思いきや、なんと当日(5/4)の宿泊客は私を含めて三組だけ。部屋数的に十組ぐらい泊まれるはずなので、繁忙期でこれって大丈夫なのかと思う一方、またひとつ穴場を開拓した気分で優越感が半端なかった。
エントランス。民芸品とかでごちゃごちゃしてる感じがいいですね。
案内され、たどり着いた部屋がこれ。いきなり誰かの実家かと思いました。すでに布団も敷いてあり、万年床っぽさあり。ここにかつてダメな人間がいたのだが、今度は私がバトンタッチしてダメになりに来た、みたいな世界観的演出感がある。
とりあえずお茶を淹れて、窓際のなんだか応接スペースみたいなとこに座り、障子を開けて窓の外の緑色まみれな風景を眺めつつ、つげ義春の『貧困旅行記』を読むなんてしてみました。世を捨てた感じがヒシヒシとします。外から、「ギエエ、ギエッ、ギエエ〜」と謎の鳥の鳴き声も聞こえてきました。もうダメですね。
泊まり客は少ないものの、日帰り入浴目当ての客で浴室が混んでいるらしく、しばしのんびりしたあと、機会を伺いお風呂へ向かいました。湯治宿っぽい、どこか公共施設めいた廊下の雰囲気もいい。
庭を抜けて、
露天風呂へ。ほぼ貸切状態。生垣のツツジがちょうど見頃を迎えています。これは人をダメにする風呂だ。てことで、私は10秒足らずで全裸となりこの写真を撮影しています。服を脱ぐのは慣れている(意味深)
生垣の向こう。野です。向こうに熊が現れ、ここに突進してきたらどうなるだろう。ダメでしょうね。全裸のまま私は死ぬ。まあその時はその時です。
(*´꒳`*)
無事、風呂から上がり部屋で涼んでいると、ほんとうにここって実家じゃなかろうかと思うほど、自然な馴染みに驚愕する。
日が音もなく山の端に沈んでいく。もうダメだ。うつらうつらしていたら、「ほしさーん、お食事の準備ができました」と部屋の外で女将さんの声がしました。やっぱそこは実家と違いますよね。当たり前だろ。
夕飯。流石に旅館ですからお食事はいろいろ並んでましたが、凝りすぎているわけでもなく、どこか家庭的。こういうのに私は弱い。ていうか、何枚かうちでも使ってる皿があるぞ笑。
特になにが美味しかったかというと、個人的には天ぷらですね。中でも旬のコシアブラやコゴミの天ぷらが。
お膳を前にしてお酒を飲まないなんて選択肢は私にありません。ということで冷酒をちびちびやっていく。これはもはや一生付き合っていく様式的なダメさだと思います。私という人間性を様式的に保護するというかね。なにを言ってるか自分でもよくわからない。
満腹し、食後は廊下を徘徊。日が落ちるとまた雰囲気が出ていいものです。ただし、レジャー要素としては、旅館の外に温泉街のようなものも無く、館内にもゲーセンや卓球台のようなアクティビティがないので、自室と湯船を行き来するシンプルな過ごし方になります。
風呂に入り(これは内風呂)
部屋で呆然と腑抜けて過ごす。単純かつ効率的に高濃度なダメ人間を作る装置。それが、小原温泉旅館しんゆの真理であると、私は自分の身をもってここに体感いたしました。
インバウンドの影響で、有名な観光地はキャパオーバーしかけており、その場の雰囲気やサービスの質も今後は変化していくと想像します。もちろん宿泊施設もその煽りを受けるでしょう。
だからこそ穴場は光り輝く。時代の影響を不思議と受けず、市井に紛れて悠然と営業している旅館が今もある。私はそんな宿泊施設を積極的に体感したいと思ってますが、懐事情もあるし、そんなしょっちゅう泊まれるわけじゃありません。年に数える程度でしょうが、今後もいい旅館に泊まったら同人誌に報告させて頂こうかと思います♨️
ちなみにこちらの旅館、Webサイトなどはありませんし、宿泊サイトへの登録もされていません。予約はお電話で申し込みください。
寄稿:ほし氏
https://twitter.com/hoshiboshi75