2年前の6月はとても暑くて驚いた。エアコン、扇風機に頼りたい気持ちが急いであった。ふと頭に浮かんだのは、
「冷たいビールでのど越しから冷たくなりたい」
と思った。
少し間が空いてから思った。
「それは本当に涼んだのか……」
不思議だが、その日からお酒を飲む事がなくなった。含みは多いが。
【白河1958/宝酒造】という名の日本のウィスキーがワールド・ウィスキー・アワード2024でワールド・ウィスキーデザイン賞に輝いたらしい。なにかしらのプロセスが認められ獲得するに至ったのだろう。興味深いが味は知らない。
白河ウィスキーは、白河工場(福島県)にて生産されており、ヴィンテージ1958は1958年に蒸留または樽熟成が開始されたウィスキーのことだと思う。白河工場は1947年に稼働した工場ではあるが2003年に閉鎖されている情報がある。店頭で見ることも、手に取る事もなく、味を知らずに、賞を取ったことだけを知る日本のウィスキー。
日本最古の古酒として扱われた白河1958の販売を担ったのはスコットランドに所在するトマーチン蒸留所のようだ。そちらでは1500本の数をかかえ、日本ではファンの為に70本が用意されていたとのこと。宝酒造さんのお気遣いだろうか。しかし、私は販売当時はこの白河1958に触れてもおらず、今回のワールド・ウィスキーデザイン賞を獲得したことで初めて知った品。価格を調べてみればインターネット上の情報では1本462万円という受け止め難い数字を目にした。果たして1杯いくらで飲むことが可能なのだろうか。
理想は、現実と成らないほうが幸せかもしれない。
私が未だBARカウンターに立ちジャパニーズウィスキーを取り扱っていた時は「山崎」、『白州』がスタンダードのような時期だった。どちらも12年ものが主流。わざとカウンターの客の視線に入る場所へ2本を並べてディスプレイした。
そうすると必ず客同士で始まる会話は
「おれは山崎派」
『ぼくは白州をゆずれないっすね』
というやり取りがいつのまにか始まる。
山崎12年、白州12年、味もデザインも似ていないから愉快だ。優劣なんてものはつけられないからこそ、その論争は終わらず、ゴールがない言葉のやり取りが行われ続け2人は酔う。そしてBARを後にする。
日本の上質な、熟成されたウィスキーの価格が手ごろでないのは昔からだが、なんとかBARのカウンターでは気軽に注文され後世にネタとして残って行って欲しいとも願う。たいそうであることは素晴らしいことだがBARのカウンターではネタが必要だ。
「いつか飲めたらいいね」
よりは
『いつもあの人コレ飲むね』
のほうが好きだ。
日本のBARで、カウンターで【白河1958】を既に呑んだ方はいるんだろうな。
寄稿者:TaNuma
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