今から20年ほど前のことだろうか、私は国際電話会社のオペレーターをしていた。ストレスになる仕事で、半年で体重が60㎏増えた。もともとの体重が60㎏だったので倍増だ。
当時は国内電話やフリーダイヤルに見せかけて国際電話を架けさせるという詐欺が横行し、その会社は電話代の債権回収が不可能になり他社に吸収され、私は会社を辞めた。
そして、ダイエットのため、毎日、白金にある自宅から代官山・代々木・初台を通って新宿まで歩いた。それで何とか20㎏ほど落したのだが、今も最大のときの体重に近くなっている。
さて、そんなウォーキングの最中、代々木の住宅地で石灯籠がある素敵なマンションを見付けて眺めていた。そうしたら今では有名な女優さんが帰ってきて、私はストーカーと間違われてしまった。
誤解を解かなければならない… そう思った私は、その女優さんの公式サイトを探した。まだフリーで活動されていた時代で、また、インターネットも個人サイト全盛の時代、公式サイトは個人サイトという形で運営されていた。
そして私は、ストーカーの誤解を解く目的だったはずが、リンクを貼ってあった、そのサイトの管理人のサイトに興味を持ってしまった。管理人は映画監督の真喜屋力さんだった。
代表作としては中江裕司氏らと大学卒業直後に撮った「パイナップルツアーズ」があり、「ナビィの恋」などの中江氏の作品に深くかかわっているほか、台湾のアニメ「アークエとガッチンポー」の監督や、THE BOOM「島唄」のPVなども撮っている方だ。
そのサイトは"TeBiCHi.com"といい、真喜屋さん手書きによる趣味のいいバナーとともに数名によるコラムが連載されていて、特別編として単発のコラムが掲載されていた。今でも"Internet Archive"に残骸が残っている。
書くことに興味を持っていた私は、精神状態がボロボロな状態で、文章とは呼べない文章を真喜屋さんに書き送り、図々しくも私にも連載枠を割り当てて欲しいと頼んだ。そのときの酷評のされ方は今でも覚えている。
私にとって、この「写真と文」の連載は、あのTeBiCHi.comを超える文章を書きたいという私の希望でもあり、小さな挑戦でもあるのだ。
今回の寄稿者:ふぉんと (𝒇𝒐𝒏𝒕)
精神病闘病ブロガー
ブログ・「遺書。」
私小説・「私の話 2019」
X (旧Twitter)・@fonttoto