ある風の強い午後だった。いつものように外回りをしていると携帯が鳴った。
「バイクが倒れてるけど大丈夫?」
ふんわりとした事務員の言い方に思わず「大丈夫ですよ」と答えそうになるが、聞き間違いじゃないかと念のため確認する。
「え、倒れたって。今どんな状況なんですか?他の車に当たってないですか?傷の程度は?」
矢継ぎ早に質問されて迷惑だったのだろうか。直接自分の目で確かめれば良い、と何処かの魔王のようなことを言われて電話を切られた。
今日乗ってきたバイクとはまだ4ヶ月程度の関係だ。ただし「大して乗ってないのね」などと言われるのは心外である。実際私たちはこの数ヶ月で様々な場所に行った。山梨、伊豆、沼津と山越え谷越えはるばると…友人たちが家庭を持つなど様々なライフイベントでバイクを手放す中、わざわざ大型自動二輪免許を取得して手に入れた相棒である。4ヶ月なんて恋人なら1番熱烈な時期だろう。そんな時期に暴風によって立ちゴケなんて、ハンドルを握りしめながら涙が出そうだった。
急いで事務所に戻ると親切なスタッフたちによってすでにバイクは起き上がっていた。だがその傷は無惨としか言いようがなく地面には外装の破片が散乱してた。その場で泣かなかったのはかなりの忍耐力が必要だった。
正直そこからの業務の記憶が曖昧だ。特にクレームも入ってなかったので恙無く終わったとは思う。後日購入したバイク屋に持って行くと、工賃含めて約6万円と言われた。プラ外装だからまだこの値段で済んだわけで、金属製のタンクが凹んだらと考えたら末恐ろしい。やはりバイクは倒れるように出来ている、外装ならしが出来たと思って、ポジティブに捉える他ないのである。
ちなみに防風時の転倒防止策としてネットを調べたところ100円均一などで販売されてる折りたたみの椅子を差し込む方法が紹介されていた。試しにやってみると、目一杯サイドスタンド側に荷重がかかるようになるので、確かに安定感が増す。ハンドルロックを掛けてあげれば、ちょっとやそっとの風ではびくともしない。
バイクに乗られる方々の参考になれば幸いです。
寄稿:ぶっころりー