写真と文

誰でも参加自由。メンバーが共同で作る WEB 同人誌

風呂に入り忘れたから日帰り温泉へ【里見温泉】

疲れていたのか、疲労がいっぺんに出たのかわからないが風呂に入らずに寝てしまった。連休なこともあり午前中の用事が済めばフリーな休日だった。いつも通り洗面台に立ち髭を剃り、歯を磨き、顔を洗い終えると…昨夜は風呂へ入っていないことに気づいた。なんだか一瞬時が止まった。特に支障があるわけではないが。

「ジムへ行こうとしていたが…温泉、日帰りで温泉へ行こう」

と呟いた。東京から戻り、約5年は経つが遠出は日光か笠間あたりしか足を伸ばしていない。温泉という雰囲気を近所の健康施設で済ませられている。そろそろ一歩踏み出してもいい気がしてもいた。きっかけとしては良いタイミングだった。

こたつへ戻り、ノートパソコンに向かって、AIに聞いてみた。

『日帰りできる温泉…』

https://nukumori.satomiful.jp/

里美温泉保養センター「ぬく森の湯」は、

茨城県常陸太田市里美地区にある日帰り温泉施設です

と回答してくれた。

距離や、場所、本日営業しているかどうかを確認し早速車へ乗り込んだ。水曜日ということで平日営業はしているようだった。基本的に木曜定休とのこと。

自分の車のナビにうる覚えの住所を入力しようとするが表示されず、少し焦りがでた。自分の車のナビはそこまで型が古いのか。(後に理解したが行き先の温泉の住所は茨城県常陸太田市であり、わたしは勘違いをし太田市で入力しようとしており、ナビには表示されなかった。栃木県の地名と入り乱れていた。)

仕方なく、スマホを開きグーグルマップを使いナビを開始させた。同時に往路へ車を走らせた。

スマホのナビに表示された往路の距離は約100km、時間にして1時間45分くらいだった。高速道路、有料道路を優先した経路。勿論、時間は惜しいので最短のルートをとった。復路のことを考えればなおさらだ。

久しぶりの高速道路に乗りICの入り口に鼓動が鳴った。一般道路でも曲がり角を簡単に間違える自分をよく知っているからこそだ。平日、昼間ということもあり一般道、高速も空いていた。田舎あるあるだ。こんな状態が週末にも続いてしまったら、閑散としていたらまた搾取されそうだ。

ひとり遠足のような気持の高鳴りで茨城県那珂ICを下りた。そこから一般道に再び入りわたしの中では既に目的地に着いてやったぐらいの気持ちだったところ…グーグルマップは音声を使いわたしに突き付けてきた。

『道なりに34kmです。』

まさかのICを下りた場所からまだ34kmも走らなければいけないなんて…舐めていた。少し愕然としたが、車内にはわたし一人が故に平然を装った。

車窓から見える景色は見慣れない雰囲気で、新鮮そのものだった。

「石」なんて商売が一目でわかる強いPRだ。

瑞龍街という場所を途中通過したのだがそこだけショッピングモールのように発展を遂げており周囲の雰囲気との差分が別格であった。松屋&とんかつがあり。スーパーがあり。マックが並ぶ。不思議な景観だった。そこを抜けるとグッと山観が強くなり傾斜が始まり、両脇には家屋ぐらいしか登場しない道路が続いた。見間違いかと自分の目を疑ったが信号待ちにより再確認できたが【ホリエモン発案のベーカリーチェーン小麦の奴隷】が存在していた。驚いた。こういった場所に展開されているとは。地元50km周辺では見た事も聞いたこともないはずだったが、さすがに目的地が約100kmになると違ったものと出会える。

右にトラクター、左にゾウシ林のような場所。地元でも見慣れた光景だが初めて訪れる土地のものは不思議と新鮮であった。

湯婆婆の妹とされるオブジェが出迎えてくれていることで目的地に着いたことを認識できた。入り口付近から既に急な斜面となっていたが、この位置から再び40度前後はあるような斜面を登って行くと施設だ。駐車場に入ると運良く1台の帰路へ向かう車と交錯した。その空いたスペースへ車を停め一息つけた。気持ちを整え施設内へ足を運ぶ。

こういった場所に久しく足を踏み入れてないせいか、とまどいが強いのと尿意が待ちきれずにいた。靴を下駄箱へしまうなりトイレを探した。一息つくことがかなうと受付の方へ向かうが、あからさまによそ者を見る視線で受け付けの女性が目を向けていた。わたしが挙動不審に映ったのだろう。急いで受付へ向かい「市外です。」と伝えた。こちらの施設は市内住民と市外訪問者の利用料金が100円違う。素直に素早くそれを伝えたおかげかどうかは不明だが安直のリアクションを見せた受付スタッフ。来訪の経緯を伝えると口もとが緩むと同時に不思議がっていた。『そんな遠方からなぜ??』と疑問が湧いたようだ。わたしは素直にAIを使ったことを隠し、パソコンで検索したらコチラが表示されたので…と含んだ。和解した仕事の関係者のような雰囲気で会話を終えわたしは入浴場へ足を進めた。

完全にアウェー感たっぷりの入浴場へ、そそくさと知らないフリを決め込み急いで服を脱ぎ、中へ進んだ。しっかりと体を洗い流し浴槽へ。外の露店風の場所もあったので当然かのようにソチラへ向かった。既に毎日来ている主のような方達が談笑していたが知らないフリをし、そそくさと入浴し適当に時間が過ぎるのを待つと周囲も穏やかになってくれたようなのでホッとし一人の世界に入り込んだ。

湯の温度は少しわたしにはヌルく感じたが、それが功を制し長い時間浸かれていた気がした。手や体に湯の成分をまとわせるように湯に触れると気持ちヌメリがあるような感じがした。効能はいかに?

適当な時間を過ごし気持ちも落ち着いたので入浴場を後にした。廊下から受付までの間に、左側か、食堂付きの休憩場があった。名物でも口にして帰ろうとメニュー、壁に貼り付けられた品書きに目をやると【ところてん】があった。350円。手ごろだ。

受付で食券を買い、食堂に戻り配膳を求めた。座敷の雰囲気も観たかったので一度そちらへ行き正座。

正座をして下を向き目をつぶると直ぐにテーブルへ置いたベル?料理が仕上がるとバイブ、振動で教えてくれるリモコン?が鳴った。あわてて【ところてん】を配膳カウンターへ受け取りに行き、今度は窓際の席がひとつだけ空いていたのでここぞとばかりに陣取った。

皿の端にからしのおまけまで用意されたところてん。涼し気に映った。ところてんを食べる前に飲んだ水。当たり前に置かれた黒いポットに詰められた水を普通に飲んで驚いたのはその澄み具合。場所柄だろうが、こんなに綺麗に感じた水は久しぶりだった。大げさでもあるが少し感動した。水が美味しい。勿論、ところてんも去ることながら。水が綺麗な土地なんだなと親身に思った。遠いけどまた来ようと少しだけ言い聞かせた。

「そうだ。温泉へ行こう!!」