中学校の同級生の結婚式に招待された。
彼は単なる級友というわけでなく、私の初めてのバイト先の先輩でもあった。初日から挨拶の声が小さいだの品出しが遅いだの散々言われ、同級生なのに何でこんな怒られなくてはならんのかと当時は憤りを覚えていたが、今では感謝をしている。とまあそんな関係だ。
ただ各方面の関係者の挨拶を聞いていると、どうも私の抱く印象と異なる部分が多い。やれ会社の顔のような人材だとか、部下に慕われていていつもニコニコだとか、本当に目の前に座る奴はあの友人なのかとジッと見つめていると、目が合いニヤリと笑われた。そこに子供の頃の面影を見つけるがそれも一瞬のことで、またするりと大人びた表情に変わってしまった。
どうも1人欠席者が出たそうで私の前には常に皿が2枚置かれる。
「お前なら2人分くらい余裕だろ」
各テーブルの挨拶の際に小さい声でそう言われた。出されたものは残さない主義なのでむしゃむしゃと食べ進める、ちょっとした特別扱いが何とも嬉しかった。
メインディッシュのステーキを頬張りながら、2人の馴れ初めのVTRを観る。一緒に撮った修学旅行、卒業式での写真、何人かで行った白川郷、おお…と声が漏れたのは私だけだった。しかし写真が切り替わるたびに騒めきが会場に広がって行く。そして見たことない人たちと友人の笑顔、会場が盛り上がる頃、私の知らない10年間がそこにあった。
山手線に乗りながら手早く現像アプリで写真を仕上げる。よく撮れた何枚かを送信するとすぐに返信が来る。
「これなんかよく撮れてるじゃん」
そう評価されたのがステーキの写真だった。そういえば長い付き合いだが、面と向かって褒められたのは今回が初めてのような気がする。部下に慕われているのもどうやら本当なのかもしれない、と思うと同時に、胸中の寂しさが少し治った気がした。
案外私はちょろいらしい。
結婚おめでとう。
寄稿:ぶっころりー